哲学・法学的に「そもそも」を考えるブログ。since 2011・3・22。

2022年7月20日、ライブドアブログより、移行してきました。

昭和51年判決(投票の価値)の内容

これは、最大判昭和51年4月14日民集30巻3号223頁のものです。
投票の価値について争われました。千葉県の選挙区です。衆議院選挙の投票の価値のリーディングケースといっていい判決です。

この判決の中で「選挙区割及び議員定数の配分は、議員総数と関連させながら、前述のような複雑、微妙な考慮の下で決定されるのであつて、一旦このようにして決定されたものは、一定の議員総数の各選挙区への配分として、相互に有機的に関連し、一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有するものと認められ、その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、右配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである」としています。これが多数意見です。反対意見を出した裁判官もいます。

詳しくは、最高裁HPから、判決全文を読んでみて下さい。「昭和49(行ツ)75 選挙無効請求」です。

つまり、日常語に近づけるとどうなるか。
議員の定数問題というのは、総議員の数等を考えながら、多くの事情も合わせて全体が決定されていく。よって、それが一旦決定されたら、各選挙区に数を配分するものとして相互に関連するので、一つの部分での変動は、他の部分にも影響を及ぼす性質を持つと考えられる。なので、選挙制度は、不可分で一体なものである。よって、単に憲法に違反する投票の価値の不平等な部分(選挙区・地域)のみではなく、全体の選挙そのものが違憲であると解される、ということです。

少数意見では
「われわれは、一部選挙区について投票価値不平等の違憲の瑕疵があるとしても、その瑕疵が、多数意見の説くように、必然的に他の選挙区全部について違憲の瑕疵を来すものとは考えないのである・・・・・一部の選挙区において生じた投票価値の不平等が、平均的な、中庸を得ている他の多数の選挙区のすべてについて直ちに違憲を来すほどの密接不可分な関連性があるとすべきかどうかについては、慎重な検討を要するものと思われる・・・・・一選挙区についての投票価値不平等の違憲は必ずしも他の選挙区についての違憲を来さないと考えることができることを意味するものであつて、平均的投票価値をもつ選挙区については、他の選挙区において投票価値の不平等が生じたこととは関係なく、依然として憲法の理念に合致しているものと認めることができるのであるから、これらすべての選挙区について一律に違憲であると断定する必要は全くないものと考えるのである」と、多数意見を牽制しています。

この判決の少数意見は、この選挙区については選挙自体無効であり、やり直すべきとします。しかし、違憲でない他の選挙区(平均的投票価値を持つ選挙区)は、関係ないから合憲であるとします。だから、違憲選挙区だけやり直すことで、特に問題でないというわけです。

一方多数意見は、全体がつながっているものであるから、その一部が違憲と判断されれば、その選挙全体が違憲である。しかし、事情判決の法理を用いて、違憲であるが、それを主文で宣言するにとどめ、やり直すことはない、つまり、選挙自体を無効とすることはしない、としました。