哲学・法学的に「そもそも」を考えるブログ。since 2011・3・22。

2022年7月20日、ライブドアブログより、移行してきました。

こども園(幼稚園・保育園)の送迎バスにおける置き去り事故防止の対策について

はじめに

私は「この種の事故があってはならない」「幼稚園がこのレベルであってはならない」という問題意識の基で書いております。このレベルではいけないし、二度と起こしてはならないのです。そして、もし、この種の事故が個人レベル・園レベルで解決できないならば、地方公共団体・政府が対策を示すべきだと思います。

 

そういうした問題意識から、ここで後に記している対策については、私の危機管理・リスクマネジメントに関する学問的研究の成果と言ってもよいものになっていると自負しております。よって、国や地方公共団体の政策決定担当者や、保育園・幼稚園の先生方・経営者様、年齢の低いお子様をお持ちの保護者様にも、是非知ってほしいと思っております。

 

では、概要から参らせて頂きます。

概要

9月8日、とんでもない事故が飛び込んできました。

 

静岡県牧之原市静波の認定こども園「川崎幼稚園」で、3歳の女児が送迎バスに置き去りにされ、死亡したのです。

 

では、この原因は何でしょうか。下記、静岡朝日テレビの報道を引用させて頂きます(尚「→」は、筆者の指摘・批判部分です)

 

ここから

【速報】「4つのミスがあった」…認定こども園の会見 送迎バス置き去り死事件 静岡・牧之原市(静岡朝日テレビ) - Yahoo!ニュース

配信

園が7日午後3時から会見を開き、事故に至った原因について、以下の説明をしました。 ①バス下車時に乗車名簿と下車する子どもを照合する決まりが伝えられていなかった。

→数だけ出来れば良いんですよ。それ、出来ませんかね。

②園児がバスに取り残されていないかダブルチェックする態勢になっていなかった。

→たった6人、ダブルチェック以前に「しっかりして下さいよ」と言いたいです。

③クラス補助が登園情報を確認できていなかった。

→「あれ?」と何か感じたら、それを他の人に確認し、全員が真剣に考える風土はあったでしょうか。しかし、今回は、その前に大きな問題があったと解されます。

④登園するはずの園児がいなかったにもかかわらず、保護者に問い合わせしなかった。

→たった6人です。乗車名簿で、確認できない事務でしょうか。「登園するはずなのにいない」というよりも「乗車したのにいない」ということの方が重大です。それは、最低限確認すべきです。

ここまで

 

問題提起と批判

私は、今回の問題は、ミスと言えるものではなく、当然に果たすべきことを果たしていないというふうに捉えております。ここでは、その理由も合わせて書いていきたいと思います。

 

なぜなら、第一に、大人2人がバスにいて子供6人とされていますが、人数として大人の数は十分であり、少ないことはないです。過失は大きいと思います。第二に、たった6人ですから、入車名簿を付けていて、6人ということだけの情報で「あれっ」と気付くはずです。これも過失が大きいと思います。第三に、5時間も誰も気付かなかったというのも問題です。一人が上げた声を、全員が真剣に考える土壌が園にあったかどうかです。園の体制そのものが問われます。

 

当然果たすべきこと・当たり前のこととは、第一に確認をする。第二に真剣に事にあたる。第三に、命を預かる上での疑問が生じたら、それを優先して全員が真剣に考える(他のそうでない事柄よりもより高いレベルとする)。これらが、不十分であったと言わざるを得ません。

乗車時に出欠を取り、降車後に出欠を取ることだけでも防げたことです。出欠確認を、この園ではどうしているのでしょう。そして、欠の場合に、それを都合良く解釈してしまうような土壌があるのでしょうか。それが今回の事故を生じさせていると考えます。

広大な敷地を探すのではなく、バスという密室を確認するだけなのです。これだけの労力もしないのは、もはや、園の資格すらないと個人的には感じざるを得ません。

園は会見で、バスに同乗した大人が「慣れていなかった」というようなことを言っていましたが、社内で子供と会話もなかったのでしょうか。沢山、会話して下さい、6人だけ、自然と分かりますから。こういうことがあると、逆に、他の安全性も心配になってしまいます。

 

そして、昨年同様の事故が別の園であったことが報道されましたが、昨年の反省を全国の園が点検という形でして、兜の緒を締めていれば、防ぐことができたとも思います。この教訓が活かされず、プロ意識の欠如で最悪の事態を生じさせた責任は、人の命である以上、大きいものがあります。

 

私の対策案

ー多重防護でこの種の事故から10000%絶対に守るー

一方で、世の中には、起き得るミスであるという論も展開されております。ここからが対策の本題です。私は、ミスではなく、当然のことを当然にしていないあり得ないことだと考えておりますが、100歩譲ってあり得るミスだとしましょう。

では、そのミスを防止するためには、どういう手段があるでしょうか。私の個人的に考える対策は、以下となります。

多重の防護で、守るものです。

 

第一の壁:降車後に確認をする(車内チェック)。

第二の壁:乗車時に記録をつける(降車時に人数だけでも照らし合わせ確認)。

第三の壁:出欠確認をする(最低、降車時と園内で1回ずつ出席確認)

第四の壁:日中には、送迎バスのドアを常時開放しておく。

第五の壁:機械警備を導入する(ビル管理で主に施錠後のセキュリティーとして導入されているセンサーを、送迎バスに導入し、施錠と同時に自動的に作動させる。又、定刻までに作動させない場合の自動警報アラーム設定も重要。警備会社や園の事務所で管理し、異常時に駆け付ける)。

第六の壁:運転手がバス内で常時待機している状態にする(バス内を業務する場所に)。

他①:靴を預かり車内土足禁止ルールを設ける。

他②:園での出欠確認で欠の場合には、必ず車内カメラで乗車していないことを確認する。

他③:セキュリティーカード等を子供に持たせ、バス乗車の際にかざして乗車をコンピューター管理する。そして、園の出欠確認に活かす。

他④:園児に置き去り・閉じ込め発生時の訓練をする(クラクションを鳴らす訓練等)。

 

上記を整理すると、以下のように、主に、①人の管理、②システム・組織体制での管理、③機械での管理に分けられます。よって、これらを組み合わせることが望ましいと考えます。

・人の管理の例

 第一の壁、第二の壁、第三の壁

・システム・組織体制での管理の例

 第四の壁、第六の壁、他①、他②、他③、他④

・機械での管理の例

 第五の壁

 

これら送迎バスの置き去り対策として、例えば「車内置き去り防止対策導入車」等として、一定の対策に導入により、国や地方公共団体が認定し、送迎バスにステッカーを貼れる等すれば、保護者は、それに基づいて安全・安心を重視している園を選べることになります。よって、こういう取組みは、導入の易難を侃々諤々議論しつつ、今後重要になってほしいと思います。問題はどこまでやるか、どこまで本気になるかにかかっていると言えます。

 

※尚、今回の園のように、単なるアプリ管理では、機械による管理とは言えません。人による管理でしかないからです。これは、あくまで一定の人が入力して、一定の人が確認するものだからです。なので、勘違いとして「失念した」や「大丈夫だと思った」の言い訳が当然に予想されることになります。

しかし、対策で言う「機械による管理」とは、一定の設定のもとで、一定の事が、一定の時間までに行われない場合には、警報アラームが鳴り、一定の事がされるまで、それを要求するものです。なので、機械が忘れさせません。そして、それに加え、何か事が起きた場合にも、警報アラームが鳴ります。このように、ここまでいって、はじめて機械による管理と言えます。ビルの管理において、実際は何でもないようなことで、警備会社が駆け付けてきた実例を知っている会社員もいるでしょう。機械による管理とは、無視や思い込みを許さない管理であり、こういうことなのです。

最後に

さて、最後に話は変わりますが、この幼稚園、数々の「大切にする」シリーズで有名な、元法政大学教授の坂本光司著の『静岡発 人を大切にするいい会社見つけました』に紹介されていると、園が宣伝しているようです(HPより)。 これは、現在となっては、もはや皮肉でしかありません。「勝って兜の緒を締めよ」という言葉がありますが、紹介されたことで、さらに様々な面で向上させてほしかったと思います。全国の関係者の皆様、これを教訓に、今一度、兜の緒を締めてほしいです。

 

尚、ミスやヒューマンエラー単体を扱ったものは、過去に書いており、こちらも興味がありましたら、合わせてご参照下さい。参考になれば幸いです。

ミス(ヒューマンエラー)とは何か ―減らすために私が考えたこと― - 哲学・法学的に「そもそも」を考えるブログ。since 2011・3・22。