哲学・法学的に「そもそも」を考えるブログ。since 2011・3・22。

2022年7月20日、ライブドアブログより、移行してきました。

尾畠春夫さんについて―改めて感じる尾畠さんの素晴らしさ―

昨夜、尾畠春夫さんのドキュメンタリー「情熱大陸」がやっていた。
そこで改めて、尾畠春夫さんのすごいところを書いておきたい。


まず、多くの方が初めて尾畠さんを知ったのは、2歳児の行方不明のニュースだろうか。

警察や消防等が捜索しても、長い時間見つからなかったところで、尾畠さんが見つけたのである。これは、盲点と言うか、本当に警察や消防はどのくらい動いていたのかという疑問というか、それよりも、尾畠さんのプロフェッショナルとしての力を感じさせた出来事である。

ただ、それに対し、一部の人々から「なぜ子供を警察に引き渡さなかったのか」「すぐに引き渡すべきだ」等の批判がある。
しかし、実はこれは、現実を全く分かっていない論理でしかない。


そもそも警察は、捜査のプロであって、人探しのプロではないのである。
警察は、このような場合、まず事件性があるか否かを考えることになる。
「連れ去りではないか」「置き去りにされたのではないか」等がそれである。

そうすると、捜査が終わるまで、母親にも会わせてもらえなくなることも、十分に考えられる。そして何より、我々が見つけましたと、宣伝・広報材料にされることだ。
よって、尾畠さんの判断は、全く間違っていない。そういうことよりも、もっと大事なことがあるのであって、捜査は後で良く、もっと大事なことを優先させたのである。

警察は仕事なので、そういう精神的なことは関係ないので、杓子定規に引き渡せとなる。しかし、尾畠さんは、そういう杓子定規ではない純粋な心があるから、一旦は待ってくれということである。ただ、大怪我をしていたり、すごく弱っている等の事情があれば別ではあるが、今回のケースはそうではなく、比較的元気だ。

よって、警察に直ちに引き渡さず、一度保護者を安心させ、その後の引き渡すことは、とても人道的に適った方法である。一方、マスコミがいなかったら、警察に強引な人がいたらと考えると、警察に強制的に奪われてしまっていたかも知れないので、恐ろしい。今回は、警察も消防も、人情が分かる人だったと思われ、そこが救いだったと思われる。

さて、この尾畠さんがすごいのは、その2歳児行方不明のニュースの会見もである。
見つけた当日、尾畠さんは、テレビカメラ等の報道に対応していた。
それは、見るからに丁寧であった。私なら、いや、多くの方は
「何度も同じこと言わせないで下さいよ」「また言うんですか」
「もう、いいですか、帰っても」「ちょっと疲れているので、勘弁してくれませんか」
と言っているか、心で思って苛立っていることだろう。

しかし、尾畠さんは直立し、身振り手振りで、状況を何度も、そして様々な表現の方法を駆使して、必死に伝えていた。逆に、質問の方に問題があるのではないかとさえ、思われるものもあったが、丁寧に対応している様を見て、これは本物だな、と感じたものである。そこには、尾畠さんの苛立ち等は一切なく、逆に、尺の都合もあるのか、報道陣の一部の気が散ってきた雰囲気に、テレビの前から「もう止めてやれよ」と思ったほどである。

ゆっくり休んでからではなく、その日に。物凄く疲れているはずにも関わらず。

そして、その後の報道で特集等も組まれ、尾畠さんの人柄や信条等が報道されてきた。書ききれないので、一部を箇条書きにさせてもらう。

1、ボランティアされる側から施しは受けない。
2、ボランティアは長く、東日本大震災西日本豪雨大阪北部地震熊本地震等でも活動。
3、ボランティアの知恵も多くお持ちになっている。
4、講演の仕事依頼等は、実践第一で原点を忘れないためと断っている。
5、生の物で、断れずに貰った際は、深々とお辞儀をして、相手に礼を尽くす。
6、年金を遣り繰りして生活している。
7、ボランティア中は、自給自足自炊で全て持ち込み、車で生活。
8、贅沢は、ほとんどしない。質素。
9、ボランティア時は、名前や住所等の身分を明らかにし、不安を取り除く。
10、被災者に不要なことは一切聞かず、元気を与えることだけ考える。
11、ボランティア先では、知恵を精一杯生かし、率先して行動する。
12、場を和ませるために、よくシャレを言う。それも又、庶民的なものを。
13、ボランティアを「させてもらう」ということを常に頭に入れている。
14、ボランティアでは、率先して泥臭いことを行う。
15、一緒に作業をするボランティアの方にも、心配りをする。
16、掛けた情けは水に流す、受けた恩は石に刻むがモットー。

素晴らしい!人の良さが伝わってくるものである。
人の良い人は世の中に多くいるだろう。
しかし、尾畠さんのように、講演すらも断り、年金だけ貯金無しで、質素をモットーとして、贅沢を極力しないでボランティアをする方は、非常に少ないと思われる。その内の貴重な一人なのである。

情熱大陸は、録画して4回見てしまったほどである。
尾畠さんのこれまでの人生に、その素晴らしい根幹があるように感じた。
神回という言葉があるが、この方を取り上げたことには意義がある。
ワイドショーではないのだから、30分では短いのではないか。
スペシャルで良かったし、それで見たかった。

因みに、尾畑さんではないし、小畑さんでも小幡さんでもない。尾畠春夫さんである。