哲学・法学的に「そもそも」を考えるブログ。since 2011・3・22。

2022年7月20日、ライブドアブログより、移行してきました。

簡単な金利の問題からみる社会の複雑性

いきなり問題です。
 
あなたは、金融機関から金利(年率)12%で100万円借りました。その時、契約書には「返済は月々1万円でOK」と書かれていました。毎月の返済額が減るのは良いことだと思ったあなたは、早速その条件で契約しました。
 
さて、あなたが借金を返済し終わるのは、何年後のことでしょうか?
(尚、金利は単利とする)
 
A 5
B 8.3
C 10
        (木暮太一著『カイジ「命より重い!」お金の話』サンマーク出版より)
 
 
この問題、ほとんどがCと答えたそうであるが、正解は一生返し終わらないとのこと。
引っかけ問題ではあるが、Cと答える人が多いものかと驚く。
単純に考えれば、あくまで単利であっても、金利12%は、1年で12万円の金利がつくということ。月1万ということは、1年で12万円を返すということ。つまり、一生、元本が減らず、金利分だけ返し続けなければならない。
 
このケース、様々なところで引用されており、金融リテラシーというか、社会的なリテラシーというか、そういうものを見るものである。
 
ただし、この話には、大きく2つカラクリがあることをお気付きだろうか。
 
一つは、実際は、この条件は借手にとっては嬉しいことだということである。
確かに、返済は一生続く。しかし、1年での返済はあくまでも、12万円である。
ということは、通常、我々の平均寿命から計算すれば、金利が0であっても、
80年以上はかかることになる。
よって、返済云々の前に、人の寿命が終わる可能性が高い。
それゆえ、借手有利であり、貸手は、まずこうした条件の提示をすることはない。
しかし、少し額を調整することで、一気に貸手有利になることは、付言しておきたい。
 
二つ目は、もし、これが返済分を全て元本に充てられ、そして、金利はその元本から計算される、というものであれば、元本が減っての再計算となるので、100万円を下回ることとなり、ものすごく返済期間が長くなって、一生のうちに返せないということになるが、一応は、返済ができることになる。
 
さて、話題が変わるが、いずれにせよ、社会は複雑なしくみで出来ているということである。
こうした問題にしても、理解するのが非常に大変である。
これは、言葉・言語の限界なのだろうか、それとも一般的な人の能力の限界なのだろうか。
 
かつて、ドラマ「ドラゴン桜」で、主演の桜木先生(弁護士)役の阿部寛さんが「社会のルールは頭の良い奴が作っている。そういう奴らの都合の良いように作られている。例えば税金、年金保険制度、給与システム、皆、頭の良い奴らがわざと複雑に分かりにくくして、ろくに調べもしない頭の悪い奴らから多く取ろうとする仕組みにしている。馬鹿は騙されて損して負け続ける」と言うような話を生徒に向かって言う場面があった。
 
このドラマでは、だから東大へ行けという図式へ変換されてしまうのだが、その適否は置いておき、言っていることはあながち間違いでもない。社会のシステムが複雑すぎるのである。
 
よく、この問題をA4の1枚にまとめろ、というようなことが言われるが、
複雑なものをA4の1枚にまとめれば、ものすごく単純化しなければならず、重要な部分の大部分がそぎ落とされる。
しかし、多くの人々は、要点しかとらえようとせず、複雑な部分を複雑なまま把握しようとはしない。徹底的な合理化である。こうしたところに、落とし穴は存在しているのだろう。
 
これを解決するには、大切なものをきちんと複雑のまま理解するしかないのだが。