哲学・法学的に「そもそも」を考えるブログ。since 2011・3・22。

2022年7月20日、ライブドアブログより、移行してきました。

心理学 ―流行っているが100%ではない―

様々な学問分野がありますが、その中でも心理学は、他の学問と比べ、まだ歴史が浅く発見されていることが非常に少ない学問分野ではなかろうかと思います。

 そもそも、心理学とは、ジョニー・E・ジョンストン著、最上悠監訳、登内温子訳の『世界一わかりやすい人間まるわかり 心理学講座』(総合法令出版・2003年)によれば「人間の本質に関する科学。人間の心や行動についてのすべての研究」ということです。
つまり、人間、社会としての集団の心という面を研究している学問分野です。

 これは、別の見方をすれば、科学的には、非常に難しい分野でもあります。結果として、こういう結果になりました、ということは可能でしょう。しかし、他へのあてはめという点では、非常に難しいものです。実体が詳細に解明できていないため、なぜ?という曖昧性が残ってしまうからです。それは、心理学が現象を捉えるからであり、因果関係を主としているからです。人間の心がどういうはたらきによって、どう作用し、どうなるのか、ということは、現在の学問のレベルでは解明できていません。

 一方、○○心理学と言えば、実に様々な言葉があります。臨床心理学、社会心理学、行動心理学、教育心理学、はたまた、恋愛心理学という言葉すらあります。人の心が分かるというような、そういうイメージができていることも事実で、それを自らの欲のために使おうとしているのも事実でしょう。自らの欲というのは、一般人に限ったことではなく、国家や企業にも使われます。きちんと実態が解明できていないものの「効果がありそう」ということは、なんとなく分かっているところがあります。ただ、それは、いわゆる統計的・歴史経験的なものであったりして、現状では、実態を解明した学問とは言えないものです。

 巷で騒がれる心理としては、例えば、仕草を見て性格や考えを言い当てたり、好きな色で性格を言い当てたり等々があります。その仕草をした人、その行動をした人がどういう意図でそれをやっているのか、ということを考えれば、それだけで判断することは不可能です。それだけで判断することが統計的な当てはめなのです。偶然の行動だったり、くせだったり等、全く別の意図でそれをやっていた場合、全く当てはまらないでしょう。例えば、体のどこかが、かゆかったからの行動だとか。

 もし、心理学等によって相手を誘導できるように考えているのなら、国際間の条約締結・領土問題解決や、自白をしない犯人等を相手にして、誘導をしてほしいと思っています。まあ、これが成功したという話は全く聞きませんが。よって、あくまでも統計的な、又ケース毎のあてはめという枠から出るには、まだ遠いと思いますので、過信することは早計です。学問分野としては歴史が浅く、そして学問の分類としても、独立系的ですので、まだまだこれからの学問分野でしょう。

 以上を、独立完結的な心理学と呼ぶことにします。

 一方で、医学や歴史学社会学等の他の学問分野と接近している心理学もあります。ストレスや睡眠、学習効率等についてや、国家の世論操作・メディア操作・プロパガンダ等についての研究等です。これらは、他の学問分野と相互補完的な役割を果たし、他の学問分野の実体解明に一役かっており、独立的な心理学というより、人間の心の動き方に焦点をあてて、統計的・経験則的という面を持ちつつ、医学の病気や薬の効き方のメカニズムや、国家の意図・それに対する行動・歴史・政策等を結び付けたものです。

 これを、社会的な心理学と呼ぶことにします。

 このように、心理学には、それ独自で完結している独立完結的な心理学と、他の学問分野と相互補完的に結び付いている社会的な心理学があると思います。実際の心理学では、基礎心理学応用心理学という呼ばれ方をしているようですが、その捉え方があいまいであるため、私は、このように名付けたいと思います。特に心理学は、独立完結的で、統計的・経験則的にみた場合には、誤りがある・100%ではないということを前提に、たえず慎重に運用していくことがのぞましいのではないでしょうか。心理学が恣意的に用いられ、社会的なブームとなりつつある今、このような姿勢がもとめられるべきと解しています。